魔法戦士リウイ vol1 p3 目次 章I魔 術師ギルドの異端児 5 第II章 閉ざされた扉の向こう 37 第III章 折れた杖 107 第IV章 争いの森 145 第V章 それは愛ゆえに 183 あとがき 247
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p5 第I章 魔術師ギルドの異端児 I-1 古代王国として知られるカストゥール王国の滅亡とともに、魔法の時代が終わった。 およそ五百年前の出来事である。 その後に続く時代は〃新王国期〃あるいは”剣の時代”と呼ばれている。 魔法の時代に蛮族と蔑まれた人間が、剣の力によって新しい王国を次々と興していった からだ。五百年ものあいだに、いくつもの王国が生まれ、あるいは滅んでいった。 そして、アレクラスト大陸で、もっとも最近、建国された王国が、ここオーファンだ。 “竜殺し〃の英雄リジャールの剣によって興されたゆえ、〃剣の王国〃と呼称されている. だが、剣の時代、それもこの剣の王国においても、古代王国の魔法文明は完全に失われたわけではない。 〃魔術師〃と呼ばれる古代の魔術の使い手たちがいるからだ。
6 I-2 そして、そういう魔術師たちのなかに極めて希だが、戦いの技に長けた者もいる。 魔法を操る戦士ゆえ、彼らは〃魔法戦士”と呼ばれている。 「おめでとう」 祝福の声が響いて、陶器の酒杯が四つ、高々と掲げられた。 「ありがとう」 長身で体格も立派な一人の若者が、四人の祝福に応えて酒杯を軽く上げる。 そして薄く泡立つ赤色の液体に口をつけ、一気に飲みほした。 麦酒である。心地よい苦みと酸味が、口のなかに広がってゆく。 「あいかわらずだな」 若者の右隣に座っている別の若者が、呆れているのか感心しているのか分からないよう な口調で言った。 「この体格だもの、一樽だって一気に飲みほせるわよ」 同じテーブルを囲む五人のなかで唯一の女性が、隣に座る巨漢を横目で見ながら言った。 茶色がかった金髪が酒杯に落ちないよう、空いているほうの手で軽く押さえながら、舐めるように酒杯に口をつけている。